語学留学の役割
Hは栗色の髪をした20代後半の細身の女性で、イタリア系とアイルランド系の混血。
血筋はアジアと関係ないのだが、マンハッタンに根を下ろし彼女の住むブルックリンにも最近急増している、中国系などのアジア移民のコミュニティに詳しかった。
私もニューヨークの移民たちの生活にはたいへん関心があったので、チャイナ・タウンでの福建閥と広東閥のもめごとの話や、秩序が未構築なロシア系マフィアによる警官殺害事件の裏話など、興味深く聞いた。
Hは自分の食い込んでいるアジア系アメリカ人の社会を、私にも見せてくれた。
彼女は、Aという、アジア系アメリカ人のメディア関係者が作る組織の会員になっていて、月一度の定例会や、夏にボストンで行われた全国大会に私を連れていってくれた。
ニューヨーク支部では、S・Sという中国系の女性が会議を仕切っていた。
市長選挙があったので、市民の率直な反応も、Hの話から推測できて、新聞から知る以上のものが伝わってきた。
Hも1週間に1度、私と話すのを楽しみにしてくれていたようだった。
ときどきマンハッタンのブティックを一緒に見るのも楽しかった。
誕生日が3日違いだということがわかって、バースデーパーティをチャイナ・タウンの飲茶で一緒にした。
そのとき彼女がくれた中国風のトンボのブローチは、彼女とおそろいになっていた。
クリスマスには自宅に呼んでくれて、彼女のお母さんの手作りのイタリア料理を食べた。
日本に帰って来るとき、Hと離れるのがいちばん淋しかった。
2時のデイリーニュースのキャスターであった。
他に、F・Kという日系人のキャスターもよく会合に顔を出した。
彼はCの経済キャスターとして活躍しており、日本のテレビの経験もあった。
ボストンでの4日間にわたる大会は、パネル・ディスカッション、分科会、パーティ、そしてジョブ・セッションから成っていた。
パネル・ディスカッションは、有名なK・Cが司会をして、アジア系アメリカ人に対する社会の扱いをテーマに話した。
このところ、アメリカでは新興勢力であるアジア系に対する注目度が高まり、同時に風当たりも強まっていた。
アジア系は、人数ではまだアメリカ人全体の4パーセントにも満たないが、中国や韓国からの移民を中心に急増していて、特に教育程度が高く、経済力をつけるのも早いので、目立つ存在になってきていた。
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